さやわか×大井昌和「いまこそ語ろう、士郎正宗!ーーニッポンのマンガ #2」【四天王シリーズ #6】 @someru @ooimasakazu
【大井昌和「マンガ表現から見る/本当は読みやすい士郎正宗」】
士郎正宗というマンガ家の表現は複雑だ。
マンガ読みの中でも「士郎正宗のマンガは読みづらい」という、一般的な認識があると思う。なぜ彼のマンガは読みづらいと言われてしまうのか。この読みづらさの原因はどこにあるのか。
ここではマンガ表現をコマ割りと吹き出しという層と、コマの中の絵の構図の層に分解して、士郎正宗のマンガを見ていこう。
そもそもマンガの読みづらさとは、基本的に吹き出しの多さ=文字の多さ、コマの多さ、コマの形の乱れに原因がある。つまり絵ではなく、コマ割りに原因があるのだ。そこで参考として、拙作『おくさん』14巻の170-171ページの枠線と吹き出し(と書き文字)だけを抜き出したものを見ていただこう(図1)。
拙作は基本、雑誌などで読まれることを目的にし、リーダビリティだけに特化したいわゆる「一般的なマンガ」を目指した作品である。
対して士郎正宗のコマ割りはどうだろうか。今度は士郎正宗の『アップルシード』1巻の132-133ページの枠線と吹き出しを模写したものを見てみよう(図2)。
コマの数や形だけを見るかぎり、『おくさん』とほとんど変わらないことがわかっていただけるだろう。つまり士郎正宗のマンガは、基本的には読みやすいはずなのだ。
ではなぜ読みやすいはずの士郎正宗が、読みづらいと言われてしまうのか? それは士郎のマンガが、「読みやすいからこそ読みづらい」からだ。どういうことか。
詳細はイベント当日にご紹介したいと思うが、図2の元のページを見てみると、絵が入ることで一気に情報量が増えるのがお分かりいただけると思う。ただし、絵の情報量が増えたからといってイコール読みづらくなるわけではない。普通はどんなに情報を詰め込んでも、読者はそれを読み飛ばしてしまえるからだ。
でも、士郎正宗はそうではない。この作家は卓越した読みやすさの技術で、1コマ1コマに目一杯詰め込んだ情報を読者に読ませてしまうのだ!
複雑なストーリー、メタな台詞、アニメ文化の文脈とその先の展開を持つキャラクター、刷新されたメカデザイン、深い教養から生まれる空想建築、それらが完璧なレイアウトで回され、次のコマに続いてゆく……。
そして読者は、読みやすさを追求するマンガ表現技術によりこれらの情報が読めてしまうが故に、脳がパンクし始める。士郎正宗のマンガには、コマ内の絵を読ませる技術、読者に絵を読み飛ばさせない(視線を外させない)技術が詰まっているのだ。
そう、読みやすいマンガだからこそ生まれてしまう現象。
しかしそれはマンガとして読みづらいということではないのだ。
もし本当に面白いマンガを探していて、まだ士郎正宗を読んで無い人がいれば是非読んでいただきたい。
士郎正宗のマンガは読みやすいから。
【登壇者からのコメント】
『攻殻機動隊』がスマッシュヒットを飛ばして以来、士郎正宗はどこかアニメのイメージで語られがちになったように思う。しかし、もちろんファンなら誰もが知ることだが、マンガこそが士郎正宗の真骨頂。『アップルシード』『ドミニオン』『仙術超攻殻ORION』『ブラックマジックM-66』そして『イントロンデポ』から連なる画集の数々……。それぞれの作品に込められたアイデアはいつまでも古びないし、社会や政治、思想、文化に鋭く切り込む重厚なテーマは予言的で、現代そのものを描き出していると言っていい。ということは、つまり!『攻殻機動隊』連載から来年で30周年を迎える今こそ、改めて士郎正宗を語るべきだ、ということなのだ!大好評だった前回のイベントと同じく大井昌和さんをお迎えして、まだまだ語り尽くされていない「マンガ」としての士郎正宗作品、あるいは「マンガ家」としての士郎正宗について、徹底的に話そうじゃないですか!
(さやわか)
昔、士郎正宗を大友克洋フォロワーとして紹介している文章を読んだとき、これこそ士郎という作家の読みの難しさを端的に表すものだと思いました。士郎は漫画業界におけるガイナックスになるはずの作家だったのに、どこで世界線がずれたのか・・・。などという一人ぐつぐつとした士郎への想いを抱えて生きてたら、さやわかさんと士郎の話をできるのです!さやわかさんとなら21世紀の士郎正宗再召喚の儀になるような法印も駆式も足る話になるはずです!
(大井昌和)
【イベント概要】
漫画家の大井昌和氏の待望のトークシリーズ「ニッポンのマンガ」がついに開幕し、
大成功をおさめました!!
マイナー、メジャー問わず、称賛と批判(?!)を浴びせるトークは、
会場来場者と放送視聴者をおおいに盛り上げました。
語りたいことが無限大にある名コンビが、今回選んだテーマはずばり「士郎正宗」。
2019年に迎える『攻殻機動隊』生誕30周年を前に、
あらためて『攻殻機動隊』『アップルシード』を生み落とした士郎正宗氏の、
サイバーパンク的世界観から現代政治性まで議論し尽くします!
『仙術超攻殻ORION』『ドミニオン』のお話だけで長時間もりあがるふたりに、
熱狂的ファンの多い士郎正宗をゼロから徹底解説&作品世界を徹底解説していただく貴重な機会。
この節目を目前に、いまこそ語るべき特殊な漫画家「士郎正宗」がここにある。
マンガ批評を背負うふたりの必聴トーク、どうぞお見逃しなく!!
【登壇者プロフィール】
さやわか
1974年生まれ。ライター、物語評論家、マンガ原作者。〈ゲンロン ひらめき☆マンガ教室〉主任講師。『クイック・ジャパン』『ユリイカ』などで執筆。『AERA』『ダヴィンチ』他で連載中。著書に『僕たちのゲーム史』、『一〇年代文化論』(星海社新書)、『AKB商法とは何だったのか』(大洋図書)、『キャラの思考法』(青土社)など。近著に『文学の読み方』(星海社新書)、『文学としてのドラゴンクエスト』(コア新書)、『僕たちのインターネット史』(亜紀書房、ばるぼらとの共著)。マンガ原作に『キューティーミューティー』がある。
Twitter:@someru
大井昌和(おおい・まさかず)
第三回電撃ゲームコミック大賞銀賞
月刊電撃コミックガオ!にて「ひまわり幼稚園物語あいこでしょ」でデビュー。
主な作品は「ちぃちゃんのおしながき」「おくさん」「明日葉さんちのムコ暮らし」など
Twitter:@ooimasakazu
【チケットについて】
- チケット料金は税込価格です。
- ゲンロン友の会会員証または学生証のご提示で、当日の入場受付時に500円のキャッシュバックをいたします。会員割引と学生割引の併用はできません。学生証は国立公立学校または学校法人が発行したものに限ります。
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【入場・座席について】
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【そのほか】
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- 本イベントはインターネットでの動画配信を予定しております。ご来場のお客様は映像に映り込む可能性がございます。
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- イベント詳細情報を更新しました。 Diff#382894 2018-10-28 04:09:01
7:00 PM - 9:30 PM JST
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- Tickets
-
前売券 1ドリンク付 ※当日、友の会会員証/学生証提示で500円キャッシュバック SOLD OUT ¥2,600 友の会会員限定最前列席 前売分 1ドリンク付、共有サイドテーブル・電源あり ※ キャッシュバックはありません ※複数予約される場合はお連れの方が会員でなくても結構です SOLD OUT ¥2,600
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