翁と摩多羅神 ―中世寺院の秘神と芸能の世界ー | Peatix tag:peatix.com,2011:1 2024-04-09T21:03:46+09:00 Peatix A&ANS 翁と摩多羅神 ―中世寺院の秘神と芸能の世界ー tag:peatix.com,2024:event-3851037 2024-03-10T19:00:00JST 2024-03-10T19:00:00JST 「翁と摩多羅神 ―中世寺院の秘神と芸能の世界ー」講師:宮嶋隆輔(静岡文化芸術大学客員研究員・成城寺小屋講座)天台宗系の大きな寺院には、時折、常行三昧堂(じょうぎょうざんまいどう。常行堂とも)と呼ばれる一風変わったお堂が建立されている。常行堂では、堂の中心に阿弥陀如来を安置し、その周囲を念仏を唱えながらひたすら歩き続ける「常行三昧」という修行が修された。九〇日間もの間、行者は飲食用便のほかは一度たりとも坐ることを許されず、わずかな仮眠も柱に渡した竹の横木に寄りかかり、立ったままでとらねばならないという苛酷な行である。この行は現代でもまれに、志ある僧侶により営まれるようだ。実際に日光でこれを修したお坊さんの話を聞いたことがある。いわく「行をしているうちに、本尊の阿弥陀さんがだんだんと立ち上がってくる……」。行者がさまざまな幻覚に悩まされたというエピソードは、すでに中世から語られている(山本ひろ子『異神―中世日本の秘教的世界』(一九九八年、平凡社)に詳しい)。苛烈な修行の最中に訪れる、崩壊すれすれの精神/身体の危機。そこから救い出してくれる神仏は誰か。意外なことに、それは本尊の阿弥陀如来ではなく、常行堂の奥に密かに祀られた、摩多羅神(またらじん)という「秘神」であった。常行堂には十四人の堂僧たちがいて、ほとんど「秘密結社」的な組織を営んでいたが、摩多羅神は彼らの精神的紐帯だった。摩多羅神の由来は、経典にも見えず、謎に包まれている。謎めいていながら、その名を口にすることさえ憚られるような、荒々しく恐ろしい霊威を発する神であった。「もし私が、臨終の際その者の死骸の肝臓を喰らわなければ、その者は往生を遂げることは出来ないだろう」――。摩多羅神は、死した者の内臓を喰らうともいう。さて、正月ごとに営まれる七日間の修正会(しゅしょうえ)は、秘神=摩多羅神を奉斎する、最大の祝祭であった。一年に一度、摩多羅神の神像が迎えられ、その神前でさまざまな芸能が尽くされる。実はこの修正会に、猿楽の「翁」など、古く、マジカルな芸能が豊富に伝わっている。なぜ法会の場で、それも怖ろしき神の前で、芸能が行われるのか。それは、どんな芸能だったか――。奈良・多武峰常行堂の未解読のテキスト(『常行三昧堂儀式』)を用いながら、神秘のヴェールに包まれた修正会と、その芸能の秘密を探る。【日時】2024年3月10日(日)19時〜【開催形式】オンライン(zoom)*お申し込みいただきましたら、peatixのオンラインページからご覧いただけます。【参加費】一般  1000円、学生 500円(どちらのチケットもアーカイブ映像付き)       講師:宮嶋隆輔 〈プロフィール〉静岡文化芸術大学客員研究員、成城寺小屋講座講師。日本中世の芸能(猿楽・翁など)や三遠南信地域の民俗芸能を研究。論考「翁語りのドラマツルギー ―〈語りの翁〉から〈舞の翁〉へ」(『東西南北2014』和光大学総合文化研究所、二〇一四年)、編著に『民俗と仮面の深層へ 乾武俊選集』(山本ひろ子共編・国書刊行会)など。●参考文献山本ひろ子「摩多羅神の姿態変換 ―修行・芸能・秘儀」(『異神 ―中世日本の秘教的世界』平凡社、一九九八年)山本ひろ子『摩多羅神 ―我らいかなる縁ありて』(春秋社、二〇二二年)他●参考動画毛越寺延年の舞「老女」https://www.youtube.com/watch?v=Cy90lqRL66I&t=568s