学びながら読む、4週間の "おそい" 読書 書籍 : 『現実の社会的構成:知識社会学論考』( ピーター・バーガー著) 講師 : 佐藤 信吾 | Peatix tag:peatix.com,2011:1 2021-09-02T13:32:21+09:00 Peatix The Five Books 学びながら読む、4週間の "おそい" 読書 書籍 : 『現実の社会的構成:知識社会学論考』( ピーター・バーガー著) 講師 : 佐藤 信吾 tag:peatix.com,2021:event-1948445 2021-07-28T20:00:00JST 2021-07-28T20:00:00JST 1) The Five Bookについて長く読み継がれている古典には、視界を開かされる鋭い視点が提示されていることや、読者の琴線に触れる言葉が散りばめられていること、現代でも重要さを全く失わない問題が提議されていることがあります。当たり前だと思っていたことをもう一度考え直すきっかけになったり、新たな考えが生まれたりすることも多いのではないでしょうか。一方で、古典には、用語や文脈・歴史背景の理解が不足していると理解できない箇所があることや、言い回しや論理構造の難解な箇所も多く、読み解くのに苦労することが多いのも確かです。また、周りに同じ本を読んでいる人を見つけるのが難しいこともあり、どうしても一人でその本と格闘することになってしまいます。The Five Booksは、古典を中心に、専門家のオンライン講義を受けながら30人の読者と共に2~4週間かけてじっくりと読む、"おそい" 読書を行う読書体験プラットフォームです。The Five Bookでの講義の流れについては、以下の図をご参照ください。 2) The Five Booksの特徴それぞれのペースで書籍を読み進め、週に一度の講義を受ける、というのが基本的な流れになります。開講期間中は、Slackの期間限定の読者グループへ参加します。他の読者と疑問点を共有したり、講師からの問いについて読者同士で考えを共有・議論する中で、読みながら考えることができます。The Five Bookの講義と読書グループのイメージについては、以下の図をご参照ください。The Five Booksの詳細は公式ウェブサイトをご参照ください。3) 講義内容ピーター・バーガーとトーマス・ルックマンの『現実の社会的構成:知識社会学論考』は、「ごく平凡な日常生活を営みつつある普通の人間がその社会についてもっている常識的な〈知識〉」(「新版訳者あとがき」)をとり上げた論考で、「社会構築主義」の古典として知られています。社会構築主義は、私たちが普段当たり前だと思っている現実は絶対的なものではなく、言葉や人間関係のなかで常に変化しうるものだと捉える議論です。大麻の使用やDVといった社会問題は「はじめから客観的に存在するのではなく、『社会問題がある』と定義し、クレイムを申し立てる社会成員の活動(クレイム申し立て活動)によって構築される」(赤川学『社会問題の社会学』)と考える「社会問題の社会学」などの領域で発展し、現代の社会学の一つの大きな潮流となっています。では、本書は社会学という分野に閉じた意味しか持たないのでしょうか。私は全くそうではないと考えます。私たちは日々の生活の中で、様々な〈知識〉を動員して物事を理解しています。そしてそういった〈知識〉に基づいた物事の理解を、私たちは無批判に「客観的」なものだと思い込んではいないでしょうか。この無批判な状況を脱する手がかりを与えてくれるのが社会構築主義です。例えば「不登校」や「ひきこもり」、「喫煙」といった様々な現象が社会問題(逸脱)だとクレイム(主張)されることで、それが「問題」であるという社会的現実が構築されると考え、そのクレイムによって抜け落ちてしまっているものは何か、それは本当に「問題」として理解すべきなのか、他の捉え方はあり得るのかといった反省的な思考が促されます。こういった思考は私たちの常識を揺さぶり、新しい社会の見方を提示してくれます。社会構築主義は、社会に生きる全ての人々(私でありあなた)にとって、豊かな知的体験を提供してくれると確信しています。参加者の皆さんは、職場や学校、家庭、サークル、習い事、ボランティアなど様々な社会に属し、その中で多様な〈知識〉を吸収しています。マス・メディアやインターネットも色々な情報を日々届けてくれます。それらを吸収し常識を作り出すことは、社会という荒波を生きていく上で非常に重要なことです。しかし、そんな荒波を少し離れて、思索に耽る時間があってもいいのではないでしょうか。本書はそういった知的な休息にはもってこいだと思います。今回の読書会では、本書を4つのセクションに分けてじっくりと味わっていきます。「1960年代のアメリカ社会学が生み出した最大の成果の一つ」(「新版訳者あとがき」)を読解することで、少し恐ろしく、少し難解で、ものすごく楽しい社会学体験を一緒にしていきましょう。各講義の内容第1回(07月28日(水):20:00-21:30)イントロダクションとなる初回は、社会学における社会構築主義の潮流と、そこで取り扱われてきた具体的な対象を概観します。社会学というと「難しそう」、「遠い存在」と思われてしまうかもしれませんが、第1回ではそんなイメージを崩す意味も込めて、皆さんとの対話を深めながら、社会学の身近さを感じ取っていただきたいと思っています。また本書を考える上では、現象学的社会学という単語も外すことはできません。第1回ではこの分野の祖と言われるアルフレッド・シュッツの功績などにも触れながら、読解の道標を示します。第2回(08月04日(水):20:00-21:30)読書会の1回目は序論とI部を課題範囲とします。この部分では社会学(知識社会学)が私たちの「日常的現実」に焦点を当てることの重要性と、私たちの日常生活を規定する諸要素に関する分析が示されます。抽象的な議論も少なくない箇所ですので、参加者の皆さんとともに丁寧に読み解きながら、バーガー&ルックマンが伝えたかったエッセンスを理解できるように進めます。特に「私の意味と彼らの意味」(p.34)という言葉の含意を慎重に読み取っていきます。第3回(08月11日(水):20:00-21:30)2回目はII部1章の「制度化」を課題範囲とします。ここでは私たちが生まれ落ちた瞬間から議論を始め、社会的産物としての自我を獲得し、他者とともに社会を創造するという壮大なプロセスを、社会の「制度化」という観点から一気に読み解きます。その中では「正当化」(p.95)や「物象化」(p.135)といった重要な用語も提示されます。まさに社会が構築されていくダイナミズムを感じられる部分になりますので、皆さんと一緒に走り切りたいと思います。第4回(08月18日(水):20:00-21:30)3回目はII部2章の「正当化」を課題範囲とします。制度化を通じて秩序が構築される中で、その正当性を客観的なものとして新しい世代に受け継がせることが重要になります。正当化は「客観化された意味に認知上の妥当性を付与することで、制度的秩序を〈説明する〉」(p.143)と言われるように、「正当化」のプロセスを経て、私たちは自分が所属する社会秩序を説明することが可能になります。その核心はどのように揺らぐのか、社会における正当性とそこからの逸脱という観点に議論が進んでいきます。本書も後半部分に差し掛かります。最後まで気を抜かず、楽しく読んでいきましょう。第5回(08月25日(水):20:00-21:30)最終回はIII部と結論を課題範囲とします。II部では客観的現実としての社会がどのように構築されていくかを見てきましたが、ここでは主観的現実としての社会に焦点を当てます。ここでも生まれ落ちた瞬間から議論をスタートし、「個人の意識のなかで理解されたものとしての現実」(p.222)がどのように構築されるかを明らかにしていきます。その中で重要になるのがアイデンティティの問題です。私が私であると言えるためには、どのような過程が必要なのか、客観的現実としての社会とどのように関わり合うのかといった議論が進行していきます。さあ、長かった社会構築主義の旅もここでひとまず終わりです。最後まで一緒に疾走していきましょう。4) 講師からのメッセージ慶應義塾大学の佐藤信吾と申します。専門はジャーナリズム論、集合的記憶論です。これまでは戦争の記憶がジャーナリズムによってどのように構築されてきたかを、理論と実証の両面から研究してきました。現在は戦後日本政治の疑獄事件や改革などのイメージをジャーナリズムがどのように構築してきたかといった点にも関心の範疇を広げています。『現実の社会的構成』は私が大学院に入ったばかりの頃に読んで感銘を受けた、思い出深い本です。日常生活への関心、主観的現実として社会を捉える方法など、当時は考えもしなかったことが散りばめられている本書を読んで、自分も社会的構築という観点を持った研究をやりたいと思いました。現在は戦争の記憶やイメージがジャーナリズムを通じてどのように構築されてきたかに焦点を当てており、なんとか当初の関心を維持できていると思っています。ぜひこの感動をたくさんの方に味わっていただきたいです。また、私が愛してやまない社会学の良さを、少しでもお伝えできるように努めてまいります。ご参加、お待ちしております。5) 備考・お知らせ書籍は、参加者各自でご用意ください。講義にはWeb会議サービスのZoomを使用いたします。各講義は、録画のうえ参加者へ講義後に共有いたしますので、一部講義にご参加が難しい場合もご参加をいただけます。講義では、受講者の方に質問や受講者同士の対話を強要することはありません。講義中のご質問は、Zoomのチャットまたは音声で行うことができます。受講期間の対話ツールには、Slackを使用いたします。Zoom, Slack共に、本名またはニックネームでご参加いただけます。参加登録、お支払いは、peatixページにて行っていただきますようお願い申し上げます。参加申込期限は、07月27日の20:00となります。また、申込定員(30名)に達し次第受付を締め切らせて頂きます。本講義の最小決行人数は、5名とさせていただきます。07月26日の20:00の時点で最小決行人数に達していなかった場合は、本講義をキャンセルさせていただき、参加登録をされた皆様へご返金させていただきます。参加ご登録後のキャンセルについては、開講1週間前(7月21日)まで受付けます。peatixページよりキャンセル申請を行っていただきますようお願いいたします。その他のお問い合わせについては、トップページのお問い合わせ欄よりご連絡いただきますようお願い致します。