学びながら読む、4週間の "おそい" 読書 書籍 : 『複製技術時代の芸術』(ベンヤミン著) 講師 : 松本 理沙 | Peatix tag:peatix.com,2011:1 2021-07-24T13:38:44+09:00 Peatix The Five Books 学びながら読む、4週間の "おそい" 読書 書籍 : 『複製技術時代の芸術』(ベンヤミン著) 講師 : 松本 理沙 tag:peatix.com,2021:event-1928360 2021-06-19T11:00:00JST 2021-06-19T11:00:00JST 1) The Five Bookについて長く読み継がれている古典には、視界を開かされる鋭い視点が提示されていることや、読者の琴線に触れる言葉が散りばめられていること、現代でも重要さを全く失わない問題が提議されていることがあります。当たり前だと思っていたことをもう一度考え直すきっかけになったり、新たな考えが生まれたりすることも多いのではないでしょうか。一方で、古典には、用語や文脈・歴史背景の理解が不足していると理解できない箇所があることや、言い回しや論理構造の難解な箇所も多く、読み解くのに苦労することが多いのも確かです。また、周りに同じ本を読んでいる人を見つけるのが難しいこともあり、どうしても一人でその本と格闘することになってしまいます。The Five Booksは、古典を中心に、専門家のオンライン講義を受けながら30人の読者と共に2~4週間かけてじっくりと読む、"おそい" 読書を行う読書体験プラットフォームです。The Five Bookでの講義の流れについては、以下の図をご参照ください。 2) The Five Booksの特徴それぞれのペースで書籍を読み進め、週に一度の講義を受ける、というのが基本的な流れになります。開講期間中は、Slackの期間限定の読者グループへ参加します。他の読者と疑問点を共有したり、講師からの問いについて読者同士で考えを共有・議論する中で、読みながら考えることができます。The Five Bookの講義と読書グループのイメージについては、以下の図をご参照ください。The Five Booksの詳細は公式ウェブサイトをご参照ください。3) 講義内容この講義では、四週間にわたってヴァルター・ベンヤミン『複製技術時代の芸術作品』の第三章「写真小史」と第一章「複製技術時代の芸術作品」を読んでいきます。ヴァルター・ベンヤミン(1892-1940)は戦争とファシズムの時代に生きた思想家です。彼の著作は非常に難解ですが、『複製技術時代の芸術作品』は現代に生きる私たちでも比較的読みやすい著作となっています。というのも、写真や映画、唯一無二の「アウラ(オーラ)」をまとう芸術作品など、イメージしやすい話題が扱われているからです。今や写真や映画は日常に浸透しており、私たちは一方的にそれらの技術を用いていると思って生活しています。しかし実は、写真や映画といった複製技術によって、私たちの物の見方そのものもまた変化しています。・デジタルで絵を描くことに慣れた人がアナログで描くとき、ついついキャンバスを指で拡大しようとしてしまう。・10年前に買ったDVDを見ると、当時は鮮明だったのに、今観ると画質が粗くて見づらい。みなさんも一度はこういう経験したことがあるのではないでしょうか。どんどん新しくなる技術によって、私たちの知覚や身体もまた変化することにいち早く気付いたのは、他でもないベンヤミンでした。そしてファシズムが台頭する中、複製技術による私たちの変化に、ベンヤミンは可能性を賭けたのです。したがって『複製技術時代の芸術作品』は、・芸術と政治はどのように関係しているのか?・技術が私たちの知覚や身体に影響を与えるとはどういうことなのか?・YouTubeなど、1920年代より一層世界に氾濫する複製技術は私たちにどんな影響を与えるのか?など、現代の問題を考える上でも非常に有効な手引きとなります。ベンヤミンを読むと、みなさんが普段何気なく楽しんでいる、写真や映画による経験や、音楽ライブでの経験、パソコンやスマホでの動画鑑賞など、身近な芸術経験の意味がガラッと変わるはず。この講義がみなさんにとって、芸術、エンターテイメント、知覚、政治について、これまでとは異なる角度から思索する機会となれば幸いです。ご参加お待ちしております!講義は全5回となります。そのうち1回目はイントロダクション、2,3回目は「写真小史」、4,5回目は「複製技術時代の芸術作品」を扱う予定です。※講師は、ちくま学芸文庫の『ベンヤミン・コレクションⅠ 近代の意味』を使用する予定です。各講義内容では便宜上、『ベンヤミン・コレクションⅠ』のページ数を示しています。講義は晶文社クラシックスの『複製技術時代の芸術』など他の出版社の翻訳本で受けていただいても構いません。各講義の内容第1回(06月19日(土):11:00-12:30)第一回は、ヴァルター・ベンヤミンの生涯を辿りながら、マルクス主義やファシズムの台頭、そして複製技術の飛躍的な発達など、ベンヤミンが生きた時代の思想的、社会的背景について解説します。 また本書を読む前に、2つのポイントについて議論していきます。一つ目は「芸術と政治」についてです。ベンヤミンは写真や映画といった複製芸術に政治的な可能性を見出しましたが、そもそも芸術と政治はどのように関係しているのでしょうか?特に、政治を芸術のテーマにするのではなく、芸術そのものが人間にもたらす影響を政治的に考察するということについてお話する予定です。 二つ目は、「日々の芸術経験」についてです。ベンヤミンを読む前に、写真や映画による経験や、音楽ライブでの経験、パソコンやスマホでの動画鑑賞など、身近な芸術体験について考えていきます。第2回(06月26日(土):11:00-12:30)第二回は、「写真小史」の前半部(553-571頁)を解説していきます。 まず19世紀に登場した写真が、ベンヤミン以前にはどのように議論されていたのかを確認します。またベンヤミンが著作の中でも触れているように、1920年代末から30年代にかけて、特色ある写真集が相次いで出版されました。こうした背景を踏まえつつ、ベンヤミンによる写真への評価を、いくつかの段階に分けて考えていきます。ここで重要になるのが、「アウラ」という概念です。「アウラ」とは一体何なのでしょうか?ベンヤミンは、写真において「アウラ」は次第に取り払われていくと考えていますが、それはなぜなのでしょうか?ベンヤミンが写真の変遷を説明する上で参照しているナダールやアジェの写真を例に、一緒に考えていきましょう。第3回(07月03日(土):11:00-12:30)第三回は、「写真小史」の後半部(571-581頁)を解説していきます。 ロシア映画、「写真としての芸術」、ルポルタージュ、「写真の標題」といったキーワードをもとに読解していきます。結論部ではベンヤミンの他の著作で示されている概念やキーワードがいくつか出てくるため、講義では他の議論も簡単に紹介する予定です。 全体を通して、ベンヤミンが評価する写真にはどのような特徴があるのでしょうか。最後にこの点を確認することで、論全体の趣旨について考えていきましょう。またベンヤミンの議論を踏まえた上で、私たちの周りに溢れる写真についても議論できればと思います。第4回(07月10日(土):11:00-12:30)第四回は、「複製技術時代の芸術作品」の前半部(585-607頁)を解説していきます。まず冒頭に出てくるカール・マルクスの思想について簡単に確認します。続いて「アウラ」、礼拝価値と展示価値、コラージュなど、著作でキーワードとなっている語句を中心に読解することで、オリジナルと複製の違いを理解していきます。 ベンヤミンは芸術作品が唯一無二だった頃から一転、いくらでも複製可能な時代に突入することで芸術の社会的機能が変化したと考えていますが、それはどのような変化だったのでしょうか。「写真小史」での議論も参考にしつつ、結論に向けてこの問いの答えを予想してみましょう。第5回(07月17日(土):11:00-12:30)第五回は「複製技術時代の芸術作品」の後半部(607-629頁)を解説していきます。 映画におけるカメラ、ダダイズム、触覚的受容など、キーワードとなる語句を追うことで内容を理解していきます。最後にこれまでの議論を踏まえて、ベンヤミンはファシズムによる芸術の耽美主義化に対置する、コミュニズムによる芸術の政治化とはどのようなものなのかについて明らかにしていく予定です。またベンヤミンを踏まえたうえで、インスタグラム、YouTubeなど、1930年代より一層世界に氾濫する複製技術に対してどのようなことが言えるのか、みなさんと議論できればと思います。4) 講師からのメッセージはじめまして。松本理沙と申します。 現在は京都大学大学院で、アメリカのパブリック・アートと呼ばれる、社会空間における芸術作品の研究をしています。 芸術は社会にどう関係するのか?という大きすぎる問いについて、日々考えを巡らせています。今回講義で扱うヴァルター・ベンヤミンは非常に難解なことで知られる思想家ですが、『複製技術時代の芸術作品』は芸術と社会との関係を考えるのにうってつけの書物です。 彼が提示する様々なキーワードは今なお色褪せず、「世の中をこんな風に見ることができるのか!」という驚きと喜びを私たちに何度も味わわせてくれます。おそらく学問の最大の喜びは、世界を新しい視点から眺めることができたと感じられるときではないでしょうか。 今まで一面的にしか見えていなかった物事から、何重もの意味合いを受け取ることができたとき、これまでとはまったく異なる仕方で世界を眺めることができたとき、学問っておもしろいなあと感じるのだと思います。 今回の講義では、そんな学問の魅力に少しでも触れていただけるよう、身近な事例を盛り込みながらお話していく予定です。 そして私自身も、みなさまとの議論の中で新しい視点を発見したいなと思っています。みなさまのご参加を心よりお待ちしております。5) 備考・お知らせ書籍は、参加者各自でご用意ください。講義にはWeb会議サービスのZoomを使用いたします。各講義は、録画のうえ参加者へ講義後に共有いたしますので、一部講義にご参加が難しい場合もご参加をいただけます。講義では、受講者の方に質問や受講者同士の対話を強要することはありません。講義中のご質問は、Zoomのチャットまたは音声で行うことができます。受講期間の対話ツールには、Slackを使用いたします。Zoom, Slack共に、本名またはニックネームでご参加いただけます。参加登録、お支払いは、peatixページにて行っていただきますようお願い申し上げます。参加申込期限は、06月18日の20:00となります。また、申込定員(30名)に達し次第受付を締め切らせて頂きます。本講義の最小決行人数は、5名とさせていただきます。06月17日の20:00の時点で最小決行人数に達していなかった場合は、本講義をキャンセルさせていただき、参加登録をされた皆様へご返金させていただきます。参加ご登録後のキャンセルについては、開講1週間前(06月12日)まで受付けます。peatixページよりキャンセル申請を行っていただきますようお願いいたします。その他のお問い合わせについては、トップページのお問い合わせ欄よりご連絡いただきますようお願い致します。