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『ケアするのは誰か?』――ケアの倫理の現在地 岡野八代 / 志田陽子(聞き手)

Description
ケアという営みが社会のなかでどのように実践されているのか。これを注視することで、ひととひと、ひとと社会の関係性、そして社会活動の多くの仕組みを決定する政治のあり方を分析し、そしてあるべき姿を模索する試みが、「ケアの倫理」なのだと、『ケアするのは誰か?』の翻訳者・著者の岡野八代氏は言います。
ケアはわたしたちの身近で不可欠の活動です。にもかかわらず、その活動と活動を担う者たちが、長い歴史のなかで不当に軽視されてきたのはなぜなのか。この問題は、幅広い分野で問い返され、国際的な関心を呼んでいます。そうした幅広い意義を持つケアの倫理を、とくに民主主義との関係において牽引してきたのが、ジョアン・トロントでした。シノドス・トークラウンジでは、このジョアン・トロントの著作とご自身の論考を収めた『ケアするのは誰か?――新しい民主主義のかたちへ』を取り上げ、筆者の岡野八代さんをお招きして、「ケアの倫理」と呼ばれるものの意義と射程について語っていただきます。このテーマが無関係であるような人は、地上のどこにもいない、ということを知る第一歩になればと思います。
(聞き手・志田陽子)


ジョアン・C・トロント(著)、岡野八代(訳・著)『ケアするのは誰か?――新しい民主主義のかたちへ』(白澤社、2020年)


【プロフィール】

岡野八代
同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科(西洋政治思想史・フェミニズム理論)。政治学博士。著書に『戦争に抗する――ケアの倫理と平和の構想』(岩波書店)、『フェミニズムの政治学――ケアの倫理をグローバル社会へ』(みすず書房)、『シティズンシップの政治学――国民・国家批判』(白澤者)など。

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以下、シノドス・トークラウンジ向けに、岡野八代さんからメッセージとこの本の要点レジュメをいただきました。参加者の予習用に、全文掲載させていただきます。

『ケアするのは誰か?』 要旨 2021年3月22日

問題意識:ケアの倫理は現在、ケアという営みが社会のなかでどのように実践されているのかを注視することを通じて、ひととひと、ひとと社会の関係性、そして社会活動の多くの仕組みを決定する政治のあり方を分析し、そしてあるべき姿を模索しようとしています。わたしたちの身近な活動であるケア、しかも、ケアを受けてない存在はいないと断言できるほど人間存在にとって重要な活動にもかかわらず、なぜその活動と活動を担う者たちが、長い歴史のなかで軽視、あるいは無視され、価値を貶められてきたのでしょうか。いま、こうした問いは、倫理学に限らず、政治学や法学、社会学といった幅広い分野で問い返され、それぞれの学問体系を見直すような知的な営為として、国際的な関心を呼んでいます。本書は、そうした幅広い分野に広がったケアの倫理を、とくに民主主義との関係において牽引してきた、ジョアン・トロントが、2015年にその業績が認められて、ペンシルヴァニア州立大学から「ブラウン民主主義賞」を受賞した際の、講演録を第一章にしながら、ケアと民主主義との関係を論じています。

第一章:Who Cares? の翻訳。
ケアというニーズを他者から充たされないといけない存在と、ケアを提供するものとの関係のなかで行われる実践が、どのようなものかがしっかりと理解されるとき、これまでの民主主義論は見直される必要がある。「どのようなケアが必要とされるのかを吟味し、そのニーズを充たすための、民主的なプロセスが確立されているかどうか」に、最善のケア充足の可否がかかっている。民主主義を真に、ケアという個人的にみえる実践がよりよく行われるために革新していくためには、市場を第一に考えることから脱却し、また、ケアの価値を低くみなすわたしたち自身の考え方が改革される必要がある。

第二章:トロントのこれまでの研究史を辿ることで、本質主義との批判もあったケアの倫理が、社会を構想する理論のひとつとして誕生した経緯を明らかにした。ケアの倫理の社会(政治)理論としての課題は、ケア活動はより広く「人類史的な」実践ともいえるにもかかわらず、私的なケアとして「どこかで」(=政治的権力者たちによって)予め政治的イシューから排除されていることを分析し、「なにが政治的なのか?」という問い自体を刷新していくことである。また、社会構造を分析するさいに、ケアがどのように位置づけられているかをみることで、構造的不平等が明らかになる。そのうえで、トロントがめざす、「フェミニスト的なケアの民主的倫理」は、「民主的な政治は、ケアに対する責任配分を中心に据えるべき」と主張する。

第三章:トロントの理論をうけて、現在の日本社会にそうしたケアの倫理がどのように援用できるかを考えた章。政治という営みが、変化を繰り返し予測もつかない事態にみまわれる人間社会に安定をもたらすために、資本主義的な競争ではなくケアする民主主義が必要である。そのような民主主義を実現させるための一歩は、わたしたち自身も内面化している、ケアの低い社会的評価を再考し、現在の平等観をだれもが等しくケアのニーズをもつ、といった平等観へと刷新させていくことである。とくに、2020年以降のコロナ禍に生きるわたしたちにとって、いま目の前の社会を誰がケアしているのか?と問うこと、そのケアのニーズに政治が応えているのか、と批判的に吟味していくことは、新しい政治にとって不可欠な市民的営みである。

参考URL
ジョアン・C. トロント・岡野八代著『ケアするのは誰か?』――ケアされる者たちによる、ケア関係のための、ケアする社会へ  岡野八代
https://wan.or.jp/article/show/9199?fbclid=IwAR3gcWzzN8EUIpqvBKipNQAb7RZQUGjCr2pBtr9v3T-WKKhVCEvCfmPOtU4


【日時等の詳細】
場所:Zoom
日時:4月26日20時~21時30分
料金:1100円(税込み) ※高校・大学・大学院生は無料です。


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Mon Apr 26, 2021
8:00 PM - 9:30 PM JST
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